ヘビー級10回戦 タイソン・フューリー(英国/WBC世界ヘビー級王者) フランシス・ガヌー(カメルーン/元UFC世界ヘビー級王者)
フューリー判定勝ち。
初回、開始のゴングと共にワンツーにて急襲したフューリー。しかし、これにびくともしなかったガヌー。思えばこのシーンが、フューリーにとりタフな長い夜の幕開けだったのか。フューリーにとって助けられたのは、ガヌーがじっと待つスタイルにて手数が少なかったこと。フューリーはジャブを出して攻める。
ただし、その後にフューリーは左ジャブ、ワンツーと当てたのだが、全く効く様子のないガヌー。ガヌーがサウスポーになるとフューリーもサウスポーに構え。さらには疲弊を誘うためなのか、しきりに自らタックル状にガヌーに組みついて行くフューリー。しかし、ガヌーの体の芯の重さは尋常ではない。
その中3R、ガヌーもワンツーにて出始まる中、離れ際に左フックをかぶせられ、フューリーに1ダウンあり。目が瞬間飛んでいて危ないのではないかというダメージ具合。それでも距離を取りボクシングを続けたフューリー。ガヌーの強打が単発なことに助けられ、6Rには逆にガヌーに疲弊の気配もあり。
7R、マラソンなら30㎞過ぎ、本職のフューリーが手数を集めて、ガヌーを引き離し出すかに思えたが、中々うまく行かず。たまに出されるサウスポーからのガヌーのワンツーをもらい、コーナーに下がるフューリーも苦しい時間帯へ。8Rにはガヌーが左右フック連打で、フューリーを再び追い詰める。
9、10Rと、ボロボロになりながらも「ボクシング」をしている形は作っていたフューリー。ガヌーは最後までスタミナが持ち、重力が違うのではという異次元の重たいパンチは振ったが、単発にてビッグヒットまでは行けず。採点的には、フューリーが片翼を失いながらも何とか逃げ切った印象。
判定は、何と1者が95ー94にてガヌー支持も、2者が96ー93、95ー94にてフューリー支持。私はボクシングというスポーツの中では、「モハメド・アリポイント」と揶揄もされるが、ジャブを中心にフューリーがポイントはピックアップしていたので、ガヌーの勝ちは「やり過ぎ」の気もした。
ただし「拳の勝負」として、相手からダウンも奪い、フューリーにガヌーが決して劣っていないということには素直に首肯する。いきなりのボクシングデビュー戦で、世界チャンピオン相手にここまで肉薄するのだ。現在UFCという場がどういう人間が集まり競っているのか、そこに深い畏敬の念を持った。
「ダウンも取られてスプリットでの勝ち。。ボクサーはMMA選手を舐めない方がいいと思う。MMA選手の身体の強さは、本当に半端ない。技術を跳ね返すパワーがある。次はワイルダーと見たい。」
「世界中の身体の大きい人達は、今はボクシングを目指すのではなく、MMAに行ってるような気がする。ヘビー級のキャラクターの多さも、MMAの方が多いような。日本ボクシング界も、ウェルターくらいから、極端に人が少くなる。キックの65~70キロの人材数とはえらく違う。ボクシング界、考えないと。。」(山田武士)